「音楽の力」は恥ずべき言葉
(坂本龍一、朝日新聞 2/2)
災害が起きた時などにやたらと叫ばれる「音楽の力」という言葉に、ミュージシャンの坂本龍一は強い嫌悪感を抱いているという。東日本大震災後に子どもたちを指導するなど、音楽を通じた社会活動を続ける坂本がなぜ今、そう考えるのか。福島市の練習場を訪ねて聞いた。
・坂本龍一、東北ユースオケ公演を前に
被災3県の子どもたちで作る「東北ユースオーケストラ」を結成し、坂本が音楽監督に就任したのは2014年。以来、演奏会を定期的に開いてきた。「今まで僕が出したアルバムって全然一貫性がないでしょ? 元々僕は飽きっぽい性格。だけどこれは簡単に放り出せない。そんな覚悟で臨んでいます」と特別なまなざしを注ぐ。
練習では自身もピアノで加わり、「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」を合わせたほか、指揮を執ったり、個別指導をしたりする場面も。
「一番最後はバサッと切るんじゃなくて、余韻を残す感じで」「次の小節は3拍目に重心がかかる」。穏やかな口調で、的確な言葉を繰り出す。
復興を祈る公演などを通じて、「音楽の力」で社会に影響を与えてきたのでは、と質問しようと話を向けると、強い拒否反応が帰ってきた。「音楽の力」は「僕、一番嫌いな言葉なんですよ」という。
(続く)
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